院長コラム › 『吾輩の猫である』 (その2)

やんごとなき筋からそのミケネコの捜索依頼がホームズへ舞い込んだ。ホームズはダイヤ泥棒の窃盗団の犯行と目星をつけ捜査を開始する。

一方、ダイヤの首輪を外され身軽になったミケは窃盗団の隠れ家を逃げ出し、漱石の下宿先に迷い込む。
何も事情を知らない漱石は、おお日本の猫だとミケを可愛がる。ミケも漱石になついてくる。

謎の東洋人の家にミケネコがいるとの目撃談がホームズと窃盗団の両方に伝わる。短期間で転居を繰り返している怪しい人物だとの情報ももたらされる。ホームズは漱石を窃盗団のボスではないかと疑う。窃盗団のほうは捜索に日本人のサムライが雇われたものと動揺する。

漱石の日常生活はホームズと窃盗団の両方から見張られることになる。漱石の行動はホームズの推理の基本原理からことごとく外れている。漱石の被害妄想と現実が怪しく溶け合う。漱石に心身喪失の危機が訪れる。危うし漱石!漱石の運命や如何に!

ステラ街に下宿先を転居した時、池田菊苗が訪れてくる。後に『味の素』を発明した化学者だ。
「猫にかつおぶし。アミノ酸はコンブ」と謎の言葉を残し、日本へ帰国する。

ロンドン留学中のもう一匹の猫をめぐる物語。題して、『吾輩の猫である』

窃盗団は逮捕され、漱石への疑いも晴れ、ミケも無事キャンベラ夫人に戻された時、漱石はホームズにつぶやくように語りかける。

「ロンドンに日本の猫がいるのも、ロンドンに日本人の吾輩がいるのも同じことだ。だから、この猫は吾輩の猫であり、吾輩は猫である」