ジョージ・ルーカスの髭がまだ黒く、ひどく痩せていた時代を知っている。1977年『スターウォーズ』が大ヒットした頃だ。
当時私は25歳。まだ学生でしかなかった。
受験勉強が苦手で2浪した。大学紛争後に新設された私立の歯科大に何とか入学した。二度と紛争は起こさせないと、学生管理は徹底していた。私は大学になじめず、学業にも身が入らず、ぐだぐだと留年をくりかえし、ようやく専門課程にたどり着いたところだった。「先輩もそろそろ卒業しなきゃヤバイすよ。」と、後輩にからかわれる情けない学生の日々が続いていた。
『スターウォーズ』は、私の青春の終わりと重なる、ほろ苦い想い出の映画だ。
大学は、帝国軍のダースベイダーもどきが大勢いた。私は1人ぼっちの反乱軍だった。ルークのようにはなれそうもなかったが、「フォースとともにあらん」と、願っていた1人だ。
先輩から聞いたことがある。大学紛争の余波で歯科医の道を閉ざされた学生がいたと。希望のバトンは誰かが引き継ぎ、必死で駆けねばならない。残念ながら、それが選らばれし者でなくとも走らねばならないのだ。
ファンタジーと現実のバランスをとるのが難しく、私はいつもフラフラしていた。