院長コラム › 手嶋龍一著『インテリジェンスの賢者たち』読書メモ

手嶋龍一さんは元NHKワシントン支局長だ。退職後、『ウルトラ・ダラー』、『スギハラ・ダラー』(文庫本化の際、『スギハラ・サバイバル』と改題)で、インテリジェンスオフィサー、ステイーブン・ブラッドレーを主人公にした小説を執筆し作家活動をしている。

手嶋さんのホームページに、入会費無料の『ステイーブン・クラブ』があり、私も入会している。インテリジェンスとは「膨大で雑多な情報の中から行動の指針となる本質を抽出する作業をいう」

わが国の近代史において、その時々の権力者にとって不都合な真実は握りつぶされ、結果として進路を誤った事例は多い。空気を読み権力者に追従するだけの凡庸な上司が優秀で気骨のある部下を見殺しにしたケースが多々ある。インテリジェンスサイクルの機能不全だ。

さて、『インテリジェンスの賢者たち』は主人公よりも脇役に焦点を当てたエッセイ集だ。29編が収めてある。『僧院のジゴロ』にはやられたと思った・貴族出身かどうかの判断で「この季節、身分の高いご夫人は堂々と素足でやってくるものです。」にはまいった。

冷静で客観的な観察はインテリジェンスの基本のようだ。