院長コラム ›

「個性を発揮しろ」と教育されながら、日本の若者は黒いリクルートスーツの群れの一員となる。個性に普遍的価値がなく、その時々の社会を飾るアクセサリーのようなものに過ぎないことを暗黙のうちに了解しているからだろう。

10年ほど前、来日したスティーブ・ジョブズが銀座の画廊で日本人画家の絵を観て回った。彼が買い上げた一点は大正時代の版画家川瀬巴水だった。帰国後、全作品がほしいと注文が届いたらしい。彼の美意識、審美眼の確かさに私はやられたと思った。

彼のような感性と個性がイノベーションを生むとしたら、日本の若者には無理かもしれないと悲観的になったり、いやいや、MITメデアラボへ抜擢されたスプツ二子!さんや割烹着姿でSTAP細胞を発見した理化学研の小保方晴子さんのような若者もいるから、新しい感性と個性はちゃんと育っていると楽観的にもなったり、悲観と楽観が上下するシーソーのような今日この頃です。