院長コラム › 人生のホロ苦さ

高校の世界史の授業で、『三角貿易』を習った。

リバプールを出航したイギリスの貿易船はまずアフリカへ向かい,火薬や銃を黒人奴隷と交換した。
次に、その奴隷をカリブ海の植民地に連れて行き、砂糖と交換した。
その砂糖を積んでリバプールに戻った。イギリス国内で砂糖は高値でも飛ぶように売れた。

なんと頭のいいやり方だと、三角貿易に私は興奮した。

大学歯学部の公衆衛生学の授業で、砂糖の消費量と比例してウ蝕が増加すると習った。

この2つの知識を合体すると、18世紀のイギリス国民のウ蝕増加を防ぐには、奴隷制と植民地制の廃止が必要だと
私は結論づけた。学生の頃の私は原理主義的思考をしていた。

その後、もう少し歴史と経済と社会を学ぶと、イギリス人は奴隷制と植民地制と虫歯に悩みながらも、砂糖の利益で
資本を蓄積し産業革命を準備したことが解ってきた。

イギリス人がパブで飲み干すビールのうまさが分ったのかもしれない。人生のホロ苦さを知る年齢になったのかもしれない。